いまはもう観られない横山大観の『不二』-足立美術館での一瞬の記憶
- cqtc00h
- 6月2日
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更新日:6 日前

以前にも訪れた足立美術館。
この日本庭園を鑑賞するときにとても感じることがある。
京都迎賓館や桂離宮などを彷彿させるです。
もちろん、横山大観の描いた滝も人工で流れている。かなり、いろんな日本庭園を総合的に設計されたようでもある。
茶室は、京都の高台寺を彷彿させられるし、実際に高台寺の展示物もありました。
日本の美を集結させた人工的でもあるけれども、これを美しく保ち、四季折々の違う風景を眺められるこの足立美術館の日本庭園は、かなりの時間を費やして、設計され、維持されているに違いない。
なぜなら、苔などは、ほんの一足で、壊れて、これを修復するには、長い歳月が必要です。庭師は、かなり気を使い、この整然さを激しい外の気象に負けないとばかりに、精魂込めて手入れしているに違いないのである。
人は、変化することは、難しい。と考えがちである。
けれども、本当に難しいには、変わらないことなのです。
時間は、変化する力が働きます。これを変化せずに、維持することは、容易いことではないのです。
そう考える時、整然とした日本庭園を眺め、時の存在を忘れる、至極の時間がある。
これは、非常に、難しい技法であり、この感覚を味わうことは、なかなかできないのです。
時間の観念を拭い去った日本庭園は、一際、静寂を生みだす。
究極の味わいのある瞬間を感じることができるのです。
しかしながら、四季は、日本に存在し、これを味わい深く、変化を感じるのです。静寂の止まった瞬間に、四季の味付けされた日本庭園は、一際、人々に静寂を味わう。
時間は、進んでいるようで、日本庭園は、四季を演出する瞬間へといざなうのです。この静寂を心から、味わい、そうして横山大観展に足を運んだのです。
そこには、水墨画のようなモノラルの世界が広がっており、横山大観が好んで描いた防風林の松林が、一際、目を引いた。
風に晒された防風林は、斜めになりながらも、その姿は、枝振りが、しなやかに整っている。自然に逆らうことなく、適応して、いるのです。
自然が大好きで、水墨画に、自然界にある花の朱を刺したり、可憐なたんぽぽという野草で、彩られた春の襲来を演出している。
そんな可憐なものが好きな横山大観は、日本の富士山を「不二」として描いている。
たくさんある。日本で一番高い山である。
しかし、そこには、フジと共にコントラストとして、輝いているのは、太陽なのです。
その太陽は、丸く、ただ、絵に載っている。
水墨画の非常に筆使いの難しい絵であるのも関わらず、太陽は、丸く輝いている。軍国主義の社会に生きた画家なのです。
生涯、7,000点という絵を描いたのです。
私は、横山大観の「紅葉(こうよう)」は1931年に作成されたもので、二枚の屏風画です。この屏風は、163.3*361.1cm(一枚あたり)で二枚構成である。
横山大観にしては、色があり、華やかである。モノクロに色を刺した技法とは、全く違い、この横山大観の「紅葉」は、色で溢れている。美しい紅葉は、人々の心まで、艶やかにするような色使いです。
そうして、もう一枚に紅葉をかけ流すように涼やかな風をプラチナをふんだんに使い、モノクロだけでは、表現できない宝石の輝きが、乱反射して、その中を一羽の鳥が舞っている。
まさに、究極の涼やかな風が。キラキラと乱反射して、それは、心を揺さぶるのです。解説では、波なのであるけれども、ここは、掛け言葉のように風と波を掛け合わせてわざと、風としました。波しぶきとも言いましょうか。
こんなに豪華絢爛の絵画は、見たこともないし、これからも出会うことはないだろう。
そう思いながら、この屏風画に心を奪われた。
そうして、展示の後の方に、海の細波が、なんとゴッホの手法で描かれいる。
その横の絵画は、4羽の鳥がピカソの技法で描かれている。
遠い自由の女神のあるパリにあこがれたようである。
ゴッホとピカソは、かなり人生が違う。ゴッホは、生前は、恵まれない画家であった。一方、ピカソは、時代に合わせて、手法をかえ、人々の心を奪い、生涯裕福であった。このように人生が対比する二人の画家の手法を真似て、何を横山大観は考えていたのだろうか?
私には、想像もできない。
横山大観の死ぬ直前に描いた「不二」は、雲もなく、丸い太陽もない。光で柔らかな薄く染まった富士山は、自然で、雲にも塗れずに、描かれている。
自然を愛した横山大観の心の光が薄く、さしており、その姿は、素朴でした。
おそらく、横山大観の描きたかった富士山は、これだったんだ!と思いました。
公にせず、本当に信じられる個人にこの絵を保管して欲しいと、渡したのでしょう。
時代は、変わり、今の日本は、民主主義です。この絵は、何かを日本国民に問いを投げかけているに違いないのです。
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